対談[3] スポーツライター:戸塚啓さん

【§3. 注目する若年層の選手を見つけることでサッカーの見方は変わる】

◎サッカー界を引っ張っていくジャーナリストの必要性

山本:報道と一口でいっても、色んなタイプのライターの方とか、新聞記者の方もいるし、テレビもありますが。ライターの方の場合は、本当に若いときから、俺30年、40年やってますよって人もいるわけです。そういう人が過去のワールドカップの歴史から遡って、全部語ってもらうと重みが違ってくると思うんです。こうした仕事は、フリーで、長くやっている人が中心になっていかないと難しいと思うんですよね。リードしていくという意味では。大きな会社だと、確かに報道の量は多いんですけど、担当が3年で変わっちゃって。この大会だけ、このワールドカップのために担当が替わって、次のワールドカップまでは担当しますと。でも、終わっちゃったら、切替の時からまた新しい人がやるとか。それも悪くはないんですけど。

戸塚:蓄積がないですよね。

山本:だからやっぱり、力があって、長くやっているフリーの方が長く継続してやっていくっていう、発信する力っていうのが、もっと出てこないと逆にいけないと思います。

戸塚:そうですね。日本はまだそこまでいっていないと思います。でも、外国だったら著名なジャーナリストの方というのが、どの国にも必ずいらっしゃいますよね。ご意見番と言いますか。選手も監督も一目置くような方がいますからね。

山本:そういう方の意見が軸になって引っ張っていくといった感じに持っていきたいですね。

戸塚:Jができてまだ20年くらいですけど、選手の環境とか、監督の方とか、レベルがすごく上がってきていると思います。ただ、そのスピードに比べると、こっちが、伝える側がまだ、少し遅いのかな、っていう気がしますね。

山本:そのためにはそういうものを欲しがる人、期待して本も読むし、買うし、新聞も読むし、テレビも見てもらうって人を増やすことが必要なんです。今の日本はまだ、サッカーに興味がない人も、幅広くサッカーに興味を持ってもらう時代だと思うんで。

戸塚:はい、そうですね。

 

山本:20年経って、組織としてはJリーグも、日本代表もワールドカップに出られるようになってきました。世界を見据えながらやれるようになってきている今、更にレベルアップするためには、こういうところが必要なのかな、って思うんですよね。

 

戸塚:両輪と言って、同じ輪じゃないのかもしれないんですけど。メディアが、後ろからきちんと追いかけると言いますか、後方支援するような動力であるべきなのかな、という気がしますね。

 

◎若年層からの積み上げこそがサッカーの新時代を拓く

 

山本:2006年に代表監督が替わるりました。ジーコの時代からオシムの時代に行くんですけども、あそこは、しっかりと何が良くて、何が悪かったかってことを検証しないといけなかったと思います。ですが、その検証がほとんどなされないまま、オシムになんとなく行って、さぁオシムだよ、どうしようってなって。ジーコ時代は、日本人のスタッフが少なかったので、なおのこと課題とか修正しないといけないことが一杯あったんです。財産をどう活かすのか、下との関係をどう強化するのかとか。そういうことも含めて、ちゃんとやらないといけないこともあったと思うんですよね。

 

戸塚:そうですよね。あのドイツからでは無いと思うんですけど、山本さんとお話してすごく思うのは、若年層の育成とか、もっと言ったらもっと若いところからですかね。子どもたちから育てていかないと先がない、先に繋がらないというのを感じますね。我々の多くは、今現場で起こっている大会しか見ていないんですけど。それはもっと前からの積み重ねがあってこその「今がある」っていうのをすごく気づかされることが多いですよね。

 

山本:U-20、U-17で世界で勝っていくようにならないと、なかなかそこが見えてこないと思います。結局、スペインが2010年で優勝したけど、その11年前の99年にナイジェリアで行われたワールドユースで、20歳以下でシャビとかいて優勝して、日本は準優勝だった訳ですけど。そのシャビの世代が、その後ずっと強かったんですけど、スペインは。その世代が、勝者のメンタリティをずっと維持しつつ、そこにいて、10年後勝ったわけです。そういうものじゃないんでしょうか。日本もそこでまず優勝を目指すことがすごい重要だと思うですよね。そこはもう、経験のある人が長く指導してもらうという方向にならないとダメでしょうね。トレセンコーチがいきなりサッカーを子どもたちに教えても。基本を教えるのは良いんですけども、それをどう、実際に世界で勝つのかに繋げていくのか。世界で勝つためには、基本を教えるのとは違う能力が必要になってきます。そういうものをちゃんと長期的に見て、継続してってもらうというのが重要だと思います。

戸塚:本当ですよね。

 

山本:皆さんには是非、U-20とか、オリンピックともかもそうですけど、U-17の大会とかにドンドン行ってもらいたいです。そこには、金の卵がごろごろ居るんで。実際に行っている方、一杯いらっしゃるんですけど。そういう方達だけ1回集めて、話したいですね。こんな選手がいて、将来こんなサッカーになっていくよ、っていうような話をしたいですね。この国がすごいよとかね。

 

戸塚:そこから、数年後の未来がきっと見えてくるんでしょうね。

 

山本:見えてきますね。次のワールドカップにも直結してくる。やりたいですね、是非。U-20の大会を見てきた人が集まって、座談会。

 

戸塚:今年、あれですよね。山本さんとずっと話をしていますけど、U-19がありますし。本当に、勝たないと。

 

山本:UAE。勝たないともう、3大会で6年、世界に行かないということになっちゃいますからね。

 

戸塚:これはちょっと大変なことですね。

 

山本:それが、いま、行ってない連中が、ロンドンオリンピックで苦しんでいるわけで。上手い、技術、戦術、体力はもちろん大事ですけどね。メンタリティみたいなものが、更に大事だと思います。

戸塚:戦えるかどうかですからね。

 

◎注目の若手選手を見つければサッカーはもっと面白くなる

 

山本:若い選手で、どこかすごい大会を見たときに、こいつ将来すごくなるな、なんて驚いた人いないですか?俺はトゥーロンの国際大会で、18歳のクリスティアーノ・ロナウド見たときに、まだマンUに行く前で、スポルティングリスボンにいたんですよ。ポルトガル代表で来て、その時に、こいつはもうすごすぎるな、って思って。こんなヤツがいるのかと思ったんですよ。20歳の大会に18歳で来ていて。もう一人で全部出来ちゃうし。誰も止められないなって感じ。でも試合では、日本が1対0で勝ったんですよ。試合は、日本が。U-20のチームで。1-0で勝ったんですけど。C・ロナウドは、その1週間後にマンUに27億円だったかな、移籍したんですよ。今、ああなっているんですよ。こういうことを考えると、チームの勝利はもちろん大事ですけど、人の育成というか、子を育てていくというか、その辺のスタンスも重要で。多分、沢山良いものを見ているから、こいつこんなにすごく成長したよって、17〜8とかの頃に見た選手で驚くような選手が、ああいう大会に行くといるんですよね。良い大会に行くと。

 

戸塚:そういえば、あれですね、山本さんもコーチの時に開催された99年のコパ・アメリカの時に、パラグアイのサンタクルスがまだ、

 

山本:17歳とかで、

 

戸塚:はい。あの直後ぐらいですよね。バイエルンに取られたっていうのが。あれもやっぱり、将来性みたいなものはすごく感じる選手でしたね。

 

山本:今回のトゥーロンとかも、実はチームで勝ってオリンピックに出られるというのはもちろんのこと、ここで頑張ればこのスタンド見てみろよ、マンUに、バルサに、レアルに、みんなスカウトいるじゃん。そいつらの方を向いて、監督の方なんか見なくて良いんだよ。おれは、こういうことが出来るんだよ、ってスカウトの顔見て、やっただろうっていうくらい図々しくないとダメですよ。

 

戸塚:そうですね。

 

山本:こんなビックチャンスないですよ。国内のJリーグにいたって、マンUに、アーセナルに、レアルに、バルサに、チェルシーに、リバプールにとかね。そんなスカウト来てないですからね。トゥーロンに行ったら、みんないますからね。

 

戸塚:ビッククラブの関係者が、一堂に会するってすごいですよね。

 

山本:色々また飲みながら、みんな情報交換してね。そういうことだと思うんですよ。

 

戸塚:そうですよね。ホント、さっきお名前が出た、C・ロナウドだけじゃなくて、そうそうたる顔ぶれが、

 

山本:みんな来てますよ。だって、マスケラーノとか、あいつらもみんな、アルゼンチンの代表で来ていたし。そういう大会なんです。そういうのに、行くのは行った方が良いに決まってるんですよ。それをどう活用するのかは、別ですけどね。U-20を見に行ったみなさんと1回、またゆっくり話をしたいですね。

戸塚: 是非、お願いしたいです。

 

山本:また、色々教えてもらえると助かります。宜しくお願いします。

 

戸塚:はい、ありがとうございます。

 

以上

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