対談[2] 「アスルクラロ沼津」代表:山本浩義さん

【§2. 見守ることこそが、子どもの成長に繋がる】

◎周りとの比較、過度な期待。それらは避けた方が良い。

昌邦:しつけという部分で言うと、コーチだけでやれることではなくて、親に関わってもらわなきゃいけない。それも、おじいちゃん、おばあちゃんに関わってもらったら、もっと上手く出来るかもしれない。一つのクラブとして、スポーツを通して色んなことを教えていくんだけど。親に対する要求とか、して欲しくないことだとか。そういうものがあれば、話してもらったら良いなと思うんですけど。

浩義:一つは、他の子どもたちと比較をしない。

昌邦:比較はしない。

浩義:比較をしない。過度の期待を子どもに掛けない。

昌邦:過度な期待はしない。二つ。

浩義:特に、昔、自分がサッカーをやっていた親にありがちなのは、子どもを自分の分身みたいにして言うんです。

昌邦:(笑)

浩義:「こうやれ、ああやれ、おまえそうだろ!」みたいに。もっと酷くなると、同じチームの他の子どもにも、「おまえはそこにいれば大丈夫だから」って。みんな、何て言えばいいのでしょう…。

昌邦:子どもが試合で、

浩義:考える時間がない。

昌邦:そう、判断するとか。トレーニングで、そういう能力を磨いているのに、親が先回りして指示しちゃうみたいなこと。

浩義:よくありますね。特にサッカーやっていた親に多いですね。

昌邦:じゃあ、自分がその競技に精通していればしている程、リスクがあると。

浩義:そうかもしれないですね。

昌邦:子どもを育てる上で。だからそこは、見守るっていうこと。

浩義:見守る。そうですね。

昌邦:見守るってことが重要なんだね。

浩義:その通り。

◎才能の芽を伸ばすためにも、見守ることが大切

昌邦:それを先に指示していると、せっかくの子どもが自由にやろうとしている才能の芽を摘んでいるよ、ってことになってしまう。

浩義:そういうことですね。サイドコーチングなんかがすごく多くて。

昌邦:それ、お母さんに多いの。それとも、お父さんに多いのかな。あまり関係ないとか…。

浩義:お父さんがやっぱり多いですよね。お母さんの応援っていうのは、「何やってるの、やんなさい、がんばれ」みたいに感情的なのが、

昌邦:(笑)

浩義:すごく多くて。しっかりやりなさいとかって言って。

昌邦:お父さんは指示しちゃって。

浩義:お父さん、中でも結構サッカー知っている人は、もうちょっと戦術的なことに入ってくるので…。

昌邦:そうすると、子どもはそういうのを理解できないから戸惑っちゃうね。ピッチの上で。監督が言っていることすら消化できないのに、お父さんのコーチングもあったりする。更にコンフューズするというか、頭が混乱するよね。

浩義:そうした人は、勝利にこだわりすぎるっていうのがありますよね。知らないがために。そういった意味ではやっぱり、子どもの現状をよく見るというか、子どもが本当にそこの中で

昌邦:親にやってもらいたいこととか、

浩義:トレーニングとか、試合に関わって、楽しそうにやっているかどうか。

昌邦:それは見守るという視点で良いの。

浩義:うん。

昌邦:う〜ん。関わる、あんまり関わりすぎると、親の力が、子どもの人間関係なりに影響したりするじゃない。それはまずいでしょう。

浩義:それはまずいですよね。

◎スポーツを通して成長できることを伝えるのが親の役目

昌邦:逆に言うと、親にやってもらいたいことというのはどういうこと。例えば、褒めることをやってくれとか。

浩義:例えば、一つは、もしそういったサッカー経験している親であれば、小さいときからやってきたサッカーの良さというか。例えば、友達一杯できたとかね、すごく、色んなコミュニケーションが出来たとか。サッカーやってきて。

昌邦:いまだに付き合いがあるよとかね。

浩義:そう、そういうことですね。

昌邦:一生役に立っているわけで。

浩義:自分が成長できたこと。そういったものを子どもに伝えてあげる。サッカーってすごいんだぞ、これって良いんだぞ、っていうようなことをね。

昌邦:経験があるわけだからね。

浩義:すごくやる気も出るかな、って。

昌邦:自分が乗り越えてきたこととか、良かったこととか。

浩義:そういうことです。

昌邦:苦しいけど、それ最後まで諦めずにやって良かったとか、そういったことを伝えて欲しい。

浩義:そういったことを、言っていただけると。

昌邦:子どもだから、サッカーでいえば11人だし、出られないときもあるし、出られるときもある。その出られないときにこそ、親の力が必要になると思う。そうしたときに、親に対してアドバイスがあれば。多分、これみんなに見てもらって、参考にしてもらえればと思うんで。

浩義:あの、まぁ。

昌邦:例えば、親が、子どもが試合に出られない。ちょっと調子が落ちた。という風に見られた。別に、落ちてないんだけど。そういうときでも、子どもはそれなりに頑張っている。努力した部分とか、その成長した部分とか。例えば、試合に出られなくなったときに、試合に出られないけど、練習更に頑張ってるよねとか。試合出られなくなっても、前より集中して練習してるよねとか、前より早く行って自主トレやってるねとか。そういう努力しているところを大きく評価してやることで、見守ってるもらっているなっていうようなことが伝わるような気がする。そういったことが出来ればいいな、って思うんですよね。

浩義:我々は現場に来て、そのグラウンドでしか分からない。けど、家庭の中でも子どもは努力している。そういったものを親が身近で見ていて、気がついた小さなことでも良いから、そういったものでも評価して、褒めてあげたりする。そうすることで、子どもは親に見てもらっているということが分かるし、すごくやる気を持って出来るようになるのかな、って。

昌邦:小さな努力を大きく評価することは、その頑張りを認めているということ。それは試合で勝つ負けるということではなくて、個人のパフォーマンスだよね。一人ひとりにフォーカスしているっていうところ。そこが大事なような気がする。

浩義:そうですよね。

◎高い目標を持ち、そこを目指すことが大きな成長へと繋がる

昌邦:子どもをやる気にさせるという点で、コーチの目線でのヒントやコツがあったりすれば教えてもらえますか。さっきのしかり方とか部分とかになってしまうかもしれないけど。

浩義:より具体的に、例えば悪かったところでも、選手がどうしてこうなったのかということを考えて、コーチがそれをフォローできるような働きかけをしていく。それが出来れば、すごく子どもが伸びるのかな?って思いますけど。

昌邦:6歳くらいからみんなクラブに入ってきて、U-17の候補、15歳くらいからスタートするわけですけど、その候補に何人も、7人だっけ。

浩義:6人。

浩義:何人も送り込んでもらっていて、それだけ優秀な子も育っている。その優秀になっていくような子どもをたくさん見てきた中で、特性、共通していること。例えば、どういう子が良くなったんだよ、とか、そうした特性みたいなものがあれば、是非。

浩義:もちろん、ポテンシャルとして非常に高い子が多いし、目標設定も非常に高いところにおいているし。

昌邦:ポテンシャルっていうのは、運動能力的なこととか、人間としてのそういうこととか、技術的なことだとか。

浩義:そうですね。それはまぁ、ある程度この地域で選抜した子をピックアップしてくるので、技術的なこと、体力的なこと、色々なことで非常にポテンシャルは高いです。そうした子どもが来ているので、より高いところを目標にしているように思います。加えて、そういう選手の中でトレーニングもやるので、競争意識が高い。

昌邦:あぁ。そこが重要な視点なんだろうね。ちょっと上手というか、質が上がってきた子同士がやることで、さらに眠っているものが引っ張り出されるというような環境だよね。それは、良い競争があるということだよね。

浩義:もちろん、競争がその中にはある。その中で、やっぱり目標を高いところに持っているので、負けたくないという気持ちが強い。それが子どもたちを成長させていくんだろうと思う。もちろん、指導者の努力、指導力もあるとは思うけど。

昌邦:代表クラスまで行く選手っていうのは、運も必要なんだろうと思うけど。何か別の重要な才能というか、分かれ目みたいなこと感じませんか。中田英寿なんかはU-17の代表候補の頃、15歳くらいから見てきたけど、サッカーのセンスがあるというよりも、努力家なんだよね。15の頃からイタリア語の勉強してたり。だから20歳になって直ぐに、ペルージャで活躍できたり。そういうようなことが、もっと大切なんじゃないかと思う。選手の目標の高いって言ってたけど、多分そういうところまで行くような子は、最初からそういうところを目標にしてるんだろうね。

浩義:多分そうですね。

昌邦:実際に、代表クラスまで行った子はどうなの。どういうところを目標にしているのかなんてことは、普段の会話の中にも出てくるんだと思うんだけど。そういうところに行った子の特徴って、そういうところにもあるわけ。

浩義:まあ、そうですね。

昌邦:日本代表になって、海外でやりたいとかっていう、具体的な目標を持っているっていうこと。

浩義:身近に、代表クラスまで行った選手がいて、高校なりクラブチームに行って活躍しているわけです。

昌邦:身近にいるってことが大きい。

浩義:身近にいることは大きいですね。自分もなれる。

昌邦:イメージできる。まねできる。

浩義:なれるっていうことが、イメージできるのが非常に大きいと思います。

昌邦:その素晴らしいものを間近に見て、それが同じ仲間にいるっていうのはすごい価値ですよね、それは。

浩義:そう思います。

 

【§3. 結果だけでなく、成長の過程に価値を見出して欲しい】に続く

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