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高い山を目指すなら、小さな山へ登ろう

サッカーの世界を山に例えます。ワールドカップというのがエベレストだとすると、その世界最高峰を目指す選手たちは、小学校の頃からの小さな大会か らはじまり、小さな山を一つ一つ乗り越えることで達成感、満足感を覚え、それが次の山へ登る原動力につながっていくのだと思います。サッカーの世界では、 17才以下の世界大会があり、20才以下の世界大会があり、23才以下のオリンピックがあり、ワールドカップという年令制限のない本当の世界一を決める大 会があります。

それぞれ各年代の山へ登る達成感を味わった選手が、はじめて頂点を目指すことができます。小さな山でも、それを超えた達成感、成功体験の中から次の山への意欲が生まれてきます。

要するに、選手に意欲を持たせようと思ったら、その体験をなるべく多くさせてあげることです。私たちがいくら言っても、選手たちがその気にならな ければ何も始まりません。指導者も、いくら説明がうまくても、選手がよくなっていかなければ何もしていないのと同じだといえるでしょう。私も指導者になり たての頃は、これもあれもとすべて言いたくなったものでした。しかしそれは選手にしてみたら、いったい何をすればいいのかと混乱するだけ。たくさんの知識 の中から、適切なタイミングで適切なものを与えることで選手も納得するのです。そのあたりの適切な見極めが、指導者に求められている資質だと思います。

いよいよ2004年はオリンピックイヤー。アテネに向けて、まず3月の最終予選に万全の準備をしていきたいと思います。

2003年中はご支援ありがとうございました。

2004年は更に大きな成長をとげたいと思います。

ミスの少ないチームが勝つスポーツ

プレーの質に大きな差がなくなってきた現代サッカーで、勝敗を分けるポイントの1つが、ミスをしないということです。

ワールドカップではチーム格差が少なくなり、個人のテクニックと、ディフェンス陣のミスが、試合を決定する大きな要因になったと言われています。
これからは個々の技術、テクニックが重要視される一方で、判断ミスによる失点、コミュニケーションミスによる失点などを減少させることは大切なポイントになります。

サッカーはミスが出る事が前提のスポーツではありますが、相手よりミスが多く、しかも大きなミスから失点をするようでは、状況は厳しいものとなります。
ボールを奪われた場所や奪われ方が悪ければピンチになるでしょうし、ペナルティーエリア内でディフェンスがミスを犯せば失点につながってしまいます。

相手よりミスが少なければ、勝利は手にできます。
このことはデータを分析していけば明らかになるでしょう。

先制点とカウンターの精度

ワールドカップやオリンピックのように緊張感(試合のプレッシャー)の高い試合では、先制点によりリードしているチームの方が、リスクを避けながら、安定し、余裕を持ってプレーできます。

先制点を奪うことができれば、相手はリスクを負っても攻撃に出なければならず、スペースも生まれやすい状況となるのです。
ワールドカップを振り返れば、先制点の価値がいかに重いものであるか理解できます。

数多くのゴールを上げたチームが必ずしもボールポゼッションが高かったり、攻撃的なチームというわけではありません。むしろ、ボールを奪ったときに、相手が戻る前の有効なスペースに素早く、ボールと人を動かす事のできる戦術を身につけているチームなのです。

ゴールチャンスを増やす為には、ディフェンスからより早くカウンター攻撃につなげていける精度が大切になります。

現代サッカーでは、時間がかかり、相手が組織を形成した守備を破る為には、脱プレスの能力の高さが必要になります。プレスをテクニックでかわしな がら、相手を疲労させ、チャンスには素早い攻撃でゴールを奪う。先制点を奪えば、相手はどこかでバランスを崩し、ムリをする。その時のカウンターの精度こ そが、勝利を確実なものにするのです。

ワールドクラスの選手の育成

ワールドクラスに日本のプレーヤーが進歩していくためには、技術、戦術、フィジカル、メンタル面で別の指標を追求することで勝利して行くことが必要です。残念ながら、クラブのリーグでは、国際レベルで戦うことができません。
ナショナルチームでは、もっとタフで、もっと厳しい、もっと攻撃的な戦いがある以上、それらに打ち勝つ指標を基に強化を考えていかなければなりません。海外に進出した選手達がタフな戦いの経験を生かし成長していることは、明らかな事実です。

プレーヤーの成長には、世界の強豪国とアウェイで、環境、社会、経済、文化などの違いを乗り越えて、試合を行う過程で自信を深めていく事が必要になります。

クラブと代表チームの間には、目標の点で非常に大きなギャップがあります。しかし、これらの問題を調整し、偉大な経験をした結果、ワールドカップ での勝利を手にすることができました。フランス、スペイン、ナイジェリア、セネガル、イタリア、過去のオリンピックでの、ブラジル、ナイジェリア、南アフ リカ、アメリカ、など、これらの経験が日本サッカーの発展とプレーヤーの成長に生かされたことは、間違いない事実なのです。

ベスト16を維持し、これらの強化、育成を継続していくことが、これからの10年間の挑戦となるでしょう。

タレントの発掘 2.

タレントの発掘の2回目はフィットネスです。

フィジカル的にどのような状態にあるか?
フィジカル的にどう闘っているか?
ゲームの最後までどう頑張れるのか?
など、年齢、相手との力関係、ゲームの日程的な状況を理解した上で、上記のような事がどういったレベルにあるのかを把握していく必要があります。
特に、育成過程の選手を見ていく時には、成長過程の特性を理解して、年齢的にフィジカルがどういう状態であるのか判断、評価していくべきでしょう。その後、鍛えることが出来るものが不足しているのは、問題ないことであるからです。

日本選手が頑強な外国選手を相手に戦っていくためには、コンタクトプレーの強化は欠かせないものです。これらも含め、ゲームの中での動きがどういうレベルにあって、どう生かしてプレーしているのか? どう闘っているのか? が評価すべき点だと思います。

一般的に考えて、年齢の下の選手が上の年齢のチームで同じフィットネス能力を発揮しているとすれば、フィットネス能力は高いと言えるでしょう。

また、ゲームの最後まで頑張れる選手は、スタミナがあるというだけでなく、エネルギーの供給システム(内科的な)も能力があると考えられるでしょう。

タレントの発掘 1. ~テクニック~

スカウトは何を見ているのか?
何を見なければいけないのか?

うまい選手 = いい選手ではなく、
うまい選手 ≠ いい選手という事になると考えています。

テクニックがあって、その技術をゲームの状況、ゲームの流れの中で効果的に使う事ができている選手がいい選手と言えるでしょう。
クローズドスキル(判断のない技術)がどれだけ高くても、自分のタイミングでしかパスが出せないようではいけません。相手の能力、予測力、相手の狙いなどをしっかり読み取って、テクニックを生かせる選手こそが質の高い選手です。

ジュビロでのスカウト時代、スキル、テクニックはもちろん必要だと考えていましたが、それらをゲームの中でどう有効かつ効果的に使うことが出来ているかをチェックしていました。要するにオープンスキルの高い選手の発掘がテクニックを評価していく上で重要です。
スカウトは目的を持って試合を視察に行きます。ターゲットとなる選手は3回や4回は必ず見ています。
J リーグのチームであれば地域性などを考慮してタレントの発掘をしているはずです。
チームの勝利の為に、試合の中で、テクニックを有効に使える選手が本当の意味でのテクニックを持っていると言えるでしょう。

日本サッカーの発展に世界基準での育成は不可欠である

日本サッカーの発展の為には、代表チームでの選手の強化、育成は欠かせないものとなっています。
クラブチームだけでは、現実的に世界レベルとの厳しいゲームを経験することは難しいものです。なぜならば真剣勝負の中での試合が、ほとんどできない現実が あるからです。しかし世界クラブ選手権、トヨタカップといった、最高峰の大会に参加することができない現状があります。(世界クラブ選手権を実質的に経験 できた日本チームはまだありません。)
アジアの大会に参加できるチームも、カップとリーグチャンピオンに限られています。

世界で活躍している選手は、過去のU-17、U-20、オリンピック、ワールドカップといった各カテゴリー日本代表として世界大会を経験しながら 成長してきました。また、日本代表のほとんどの選手が、ユース、オリンピックといった代表経験をして、成長してきたことも確かな事実です。
Jリーグという素晴らしい環境が整い、優秀な選手が育ってきました。そのレベルの高い選手を更に、世界基準の経験をさせながら育てる為には、ユース、オリ ンピック世代の強化は欠かせないものだろうと考えます。ワールドクラスの選手が育てば、Jリーグの発展にもつながっていくでしょう。

企業社会でも、一流企業に勤めていることがその人の評価ではなく、どういう仕事が出来るかが問われる時代です。クラブチームでも同じ事が言えるで しょう。要するに世界基準で戦える選手、仕事が出来る選手を育てる事です。国際競争力のない選手では、クラブチームでも生き残れない時代になるでしょう。

未来への変化は常に起きている

ベニスが浸水するのではと騒がれています。ナポリ近くのカプリ島の青の洞窟が、小船では入れなくなってしまうかもしれません。どちらもイタリアワールド カップのときに行った有名な観光地ですが、本当に、自然、歴史、美しさ、文化の香り、などなど、感動させられるものです。この観光地の例を挙げるまでもな く、自然界の変化は意外なスピードで進み始めているかもしれません。

変化を発見する為には、観察することだといわれますが、観察しても、気づく人、気づかない人がいます。気づく人はデータや調査結果だけでなく、思う、感じる、考えるといった人間力の高い人です。
コンピュータ社会の中で退化しつつある感受性を磨くことは重要になりつつあります。最高級の試合を見たときに様々な感動や刺激があります。好奇心をもち、問題意識を高めながら前進するなかで経験や知識が本物の指導能力として磨かれていくのでしょう。
結果からのデータだけにとらわれず本物を見たり接したりして未来の変化を感じ取れる、人間力を高めていくことが大切です。人間の成長、進化にともないサッカーのプレーもルールも変わってきています。

サブメンバーの考え方

チームの結束は、厳しい戦いをしていくうえで重要です。選ばれた選手全員が、試合に出場できるわけではありませんが、1人、1人がそれぞれのポジション(サブメンバーも大切なポジション)でベストを尽くすことが大前提です。
メンバーの決定は監督の判断であり、サブメンバーになったからといって価値が下がったわけではないので、自信を失う必要は全くないのです。

次のチャンスを得るため、他のメンバーから信頼を失わないため、そしてなにより、チームの最大の目標である勝利を手にいれるために集中することがサブメンバーの仕事です。
そして、ゲームをピッチの上で勝利と共に終える事は、大きな喜びとなるでしょう。

サブメンバー

3枚のカードの持つ重要性は、現代サッカーでは高まるばかりです。
試合をどう勝利というゴールへつなげるか、サブメンバーの役割とプレッシャーは大きなものがあると言えます。

ワールドカップ2002、決勝トーナメント進出をかけたチュニジア戦で、後半から出場した森島があげた1点目、市川が右からのクロスでアシストした2点目を思い出せば、サブメンバーの仕事を理解して頂けると思います。

一方でビッチの外での仕事も、手を抜いてはいけないのです。例えば、ピンチになりそうな状況で相手のスローインになったボールをベンチのサブ選手 が拾い、相手に返してしまったとします。そして、そのスローインから失点もしくはピンチをまねいたとします。この判断は「決定的なパスミス」と言えると思 います。
ベンチにいながら、このようなパスミスでチームメートから信頼を失う、こんなばかばかしいことはありません。

数分のチャンスを生かし結果を出す事がサブメンバーが次のチャンスをつかめるかどうかの分かれ目だとすれば、ベンチの中で常にゲームの状況を判断し、集中しながら見る事は、最低限の仕事と言えるのです。