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子供の頃からの夢

小学校の頃の卒業文集に、将来の夢は日本リーグ(当時のJリーグ)の強いチームに入って、日本代表選手としてオリンピックに出ることだと書きました。
当時は、大きすぎる、叶わぬ夢かもしれないと思いながら、志だけは大きかった。この目標が、自分自身、当時考えついた一番大きな夢だったと思います。

ワールドカップの本当のすごさを知った今、当時の夢の延長線上にあるもっと大きなものに、挑戦している自分がいます。無我夢中で走ってきた4年間、数多く の経験をしてきました。苦しかったこと、楽しかったこと。過去の出来事が走馬灯のように思い出されます。充実した4年間の経験が、自分を成長させてくれて いるのだと思います。そう信じています。

ワールドカップのすごさと同時に、責任のとてつもない大きさも、教えてもらいました。大会中に、1戦1戦、自信をつけ、伸びていく選手を見ている楽しさ、充実感は、経験してみなければ分からりません。
ワールドカップは、何も教えなくても、人を育ててくれる夢舞台。
たくさんの子供達に、大きな夢を持ってもらったら最高です。

多くの国民の皆様に御支援していただき、ありがとうございます。
ボランティアで様々なサポートをしていただいた方々にも、お礼申し上げます。
スタジアムに横断幕を出してくださった後援会の皆様、戦う力をいただきました。

ありがとうございます。

全ゴールの35%は、リスタートから

いよいよワールドカップ開幕です。

現代のサッカーでは、スペースや時間が減少し、選手は常にプレッシャーを受けた中での厳しいプレーが要求されます。そんな中で、フリーキック・コーナー キック・ペナルティーキック・スローイン・キックオフなど、リスタートからのプレーは、攻撃側にとって数少ない、ボールを自由に蹴ることのできる大きな チャンスの場面です。

ワールドカップクラスの大会では、全ゴールの35%はこのリスタートから生まれます。必然的に、リスタートの攻防は勝敗に大きな影響を与えることになりま す。リスタートでゴールが奪えれば、試合の流れを変えることができます。またリスタートという武器があれば、相手が不用意なファウルができませんから、 ゲーム中、ゴール前でも激しいチャージを受けないで済むかもしれません。チャンスも増えるでしょうし、結果的にも、勝利に一歩近づくことになるでしょう。 何より、止まったボールを自由に蹴ることができるリスタートは、コンビネーションを使って相手の裏をつき、常に先手を打てる点で、攻撃側には相当有利にな ります。今回のワールドカップでも、FKやCKから、数多くのスーパーゴールや、勝負を決めるような価値あるゴールが見られることでしょう。

フリーキックの名手、インサイドキックの面にボールを当てながらインステップの足の振りで蹴ることができる選手は、精度が高いキックができますね。スローVTRでよく観察して、いいところもマネすることも、上達の秘訣だと思います。

毎日、新しい世界のサッカーを見ながら、リスタートの35%の真実を是非、体験してほしい。
それが次のワールドカップへつながればいいですね。

2002年ワールドカップはゴールが増える?

2002年大会は総得点が増えるのではないかと予想しているのですが、どうでしょうか?

得点が増える要因として、まずFIFAのルール改正が上げられます。例えば、ユニホームをひっぱる、後方からのファウル、などの行為に対して厳しい対応が 予想されています。FKが増加しゴール前でのチャンスが増えますし、ゴール前でのシーンでも手や腕を使うなどの行為が厳しくジャッジされるので、攻撃側が 自由になるケースが増えると予想されます。またオフサイドルールの変更、GKへのバックパス、マルチボールシステムなど、近年FIFAは得点を増やす為と 思われる様々なルール改正を実施してきました。これらの変更はインプレー時間を増加させ、実際にプレーする時間が増加したことで当然ゴールシーンも増えま す。オフサイドルールもより攻撃側に有利になる変更が実施されてきました。

他にも、ピッチの状態はどこのスタジアムも素晴らしく整備されており最高の状態ですから、ボール処理に時間をとられることがありません。そのため、相手プ レッシャーを受けずに次のプレーに移行でき、フィニッシュにつながりやすいという点も、得点の増加が期待できる要因となるでしょう。

また、暑さと湿度の高さが選手へのスタミナを奪うことになり、チームとしてコンパクトなエリアを保てずに(ディフェンスラインの押し上げや、フォワードの 戻りなど)スペースが拡大されます。有効なスペースができれば、非常に技術が上がった現代サッカーではミスなくゴールを目指すことが可能になると思いま す。

この予想が当れば、本当に楽しみの多いワールドカップとなるでしょうが、どうでしょうか?

開幕戦のフランスvsセネガルの審判のレフリングに注目してみたいと思います。

選手は日本の宝物

これまでに、ユース、オリンピック代表の仕事を何年も経験してきましたが、その時の若かった選手たちが現在は日本代表選手として、ワールドカップを戦うと ころまで成長してきています。ユースのスタートの頃には、中学生だった選手もいました。ずっと彼らの成長を見続けてきて思うことは、人間的にも、プレー的 にも、本当に大きくなったなぁということです。その選手たちと共に、ワールドカップを戦える幸せを、今はかみしめています。代表チームの9割の選手は、 ユースやオリンピックで一緒に世界大会を戦ったメンバーですから、個々の性格や特徴をよく分かっています。また付き合いも長いので、あまり気を使わずに何 でも言い合える点は、チームのバランスを保つ上で大きなアドバンテージとなっています。このように、若いときから世界のトップレベルのチームと戦ってきた 経験を持っている今回の代表選手は、日本サッカー界の「大切な宝物」です。

世界を相手に戦うギリギリの経験は、誰にでもできるものではありません。2002年のワールドカップでは、彼らにはまた一つ世界の扉を開いて、はばたいて いってほしいと思います。その一つ一つのプレーや結果が、日本サッカーの新しい歴史となっていくことでしょう。次の世代の大きな目標となるような結果を残 せるよう、全力でがんばります。最近は、選手から学ぶこともありますし、一緒に自分も成長させてもらってるんだなぁと感じます。

サポーターの皆さん。
応援してください。そして、一緒に戦いましょう。
日本人の誇りを持って・・・。

日本の宝物たちが、この大会でさらに磨かれ、世界に向けて大きな輝きを放つ大会にします。

外からの観察と実体験の差

~スタンドから見えるもの、ロッカールームから見えるもの~

フランス・イタリア・ブラジル・スペイン・パラグアイ・カメルーン・ナイジェリア・セネガル・ポーランド・コスタリカ・・・・・。ワールドカップ優勝国を 筆頭に、FIFAランキングベスト10、アフリカチャンピオンなど、本当の世界のトップチームと、この4年間戦ってきました。これは過去の日本サッカーの 歴史にはなかった素晴らしい経験です。

成功体験が翌年の自信となり、次の大会での勝利につながっていきます。

選手にとって、たとえやられることがあっても、試合での結果や一つ一つのプレーの中で相手の特徴や強さや上手さを実体験できることは、外から見ているだけ に比べれば大きな違いがあります。また、海外での勝利はピッチの中だけでなく、環境との戦いや様々なストレスなどを乗り越えていく過程も含めて、さらに大 きな自信を生みます。

指導者にとっても、『外から見ているだけでレポートを書くこと』と、『ロッカールームや日々のトレーニング・生活の中で、実際に体験したり学んだりしていること』との差は相当大きいものがあります。指導者の方々には是非、実際の現場で多くの事を学んでほしいと思います。

スタンドから心の通わない評価をすることと、ロッカールームで心と心をぶつけ合いながらより良いものを作り上げていくことの違いは、全く異なる質のものです。

ロッカールームでいい仕事ができる指導者は、人間関係、対人関係に強い人です。

コミュニケーション能力は、ロッカールームの中で育つものなのです。

「名選手、名監督にあらず」、「名選手、名監督に近し」

ちょうど、この中間ぐらいがいいのではないでしょうか。
名選手は将来指導に必要な要素を高いレベルですでに持っているという点で、いくつかのテーマにおいてアドバンテージを持っています。例えば、デモンスト レーションをするときに、高い技術は有効かつ必要なものです。どれが正しい技術で、どれがいいプレーなのか。そこに基準をはっきりさせるだけの質があれ ば、選手は頭の中に映像としてイメージできるからです。ひとつのプレーを言葉で表現しようとすると、それぞれに感じ方が違ったり、かかる時間が違ったりし ます。他にも、高いレベルでの実践を経験することによって習得している専門知識もあるでしょう。これらが、「名選手、名監督に近し」の理由です。

しかし、「指導者には、選手を伸ばす責任がある。」
すなわち、指導者は選手が実際にどれほど成長したかで評価されるものです。指導者がどんなにいいプレーをデモンストレーションで見せることができても、専 門知識があったとしても、選手がそれをどう吸収し、消化して自分のものにしていったかで、選手のレベルアップにも差が出てくるでしょう。技術や専門知識を どう生かして指導するのかという、指導能力が大切です。どんな名選手であっても、名監督としていい指導をしていくには、選手の目線で課題を見つめ、一人一 人の選手と信頼関係を築き上げながら選手を成長させていくテクニックや、能力が必要となるのです。名監督には、選手に説明するだけでなく、説得して、選手 自身で考え、技術を自分で身につけていけるようにと教える指導能力が必要なのだと思います。

実践では、定義や定説、方程式があって答えを出すわけではありません。指導者は選手に、実践という応用問題をどうやって解くのかということを教え、選手が自分で考えて行動できるようにするのです。

指導者も、その実践という応用問題に対して、ギリギリの精神状態でどういう判断ができるのかが求められています。ワールドカップでは、予選リーグと決勝 トーナメントでその精神状態に大きな差があると思うので、なんとしても予選リーグを突破して、さらにギリギリの世界を経験してみたいと思っています。決勝 トーナメントでは、たった一つの小さなプレーが試合の勝敗を分けてしまうような厳しさがあると思います。そしてこのようなギリギリの状態を選手が経験でき るかどうかが、その後大きな差になります。

日本サッカーにとって、自分自身にとっても、大きな財産になるような経験がワールドカップを通してできるようがんばります。

チームの実力は控えの力で決まる

控えの選手の層の厚さが、スタメンやゲームに出場している選手にプレッシャーを与えます。
ベンチの選手のモチベーションが低くなると、チーム力も低下します。
チームの実力は、厳しい競争の中から出てくるものだと思います。
スタメンで出場している選手は、ベンチに同じような実力の選手がいたとすると、少しでもプレーの質が落ちたり、チームがうまく機能しなくなったりすると、 ポジションを奪われることになる可能性が高くなります。そして、その交代した選手がいいプレーをして自信をつけ、レベルアップしていくと、出場機会さえも 失うことになるのです。

このような厳しい環境を作ることがチーム力アップには重要です。
同じトレーニングでも、チーム内の選手の意識の差で、内容に大きな差が出てきます。層の厚いチームでは、試合はもちろん、トレーニングにおいても選手が集中力を保ちながら、質の高いプレーをすることがレベルアップにつながると考えます。

また、レベルの高い選手を多く抱えすぎると、ベンチにいる選手がやる気をなくすような固定した使い方がされ、モチベーションの低下を招きます。すると、競争意識やムードが悪くなって、チーム一丸となって勝利を目指すという事ができない状態が起こったりするのです。

この辺のサジ加減が、指導者の大切な能力だとは思いますが・・・。

サッカーのタレント発掘

選手のパフォーマンスは、適切なトレーニングによって向上し、ある年齢を過ぎると低下します。
早熟型、晩成型などの成長は一様ではありませんが、低年齢であればあるほど、一流選手としてのサッカータレントの可能性は高くなります。
私はタレント発掘の時に、その時点でのパフォーマンスだけでなく、素質に注目します。

(1)基礎運動能力
(2)感覚・技術・センス
(3)人間性・性格

成長過程のどの段階にあるのかを、発育状態と対比しながらデータ化できる部分と、経験から得た指導者のイメージに属するものを生かして、分析し、評価していくことが重要です。
サッカーでは、U-12(12歳以下)、U-14、U-17のナショナルトレセンを実施していますが、その段階で、パフォーマンスの高い選手を集めることではなく、パフォーマンスの背後の素質をよく見極めて集め、世界基準の可能性を評価する必要があると思います。
現在、実施している各世代のナショナルトレセンの選手がどれくらいトップレベル(代表チーム)に到達できるのか、その結果を分析・判断し、方向性を決定していくことも大切であるでしょう。

私は優秀な選手を見続けてきましたが、(3)の人間性・性格では負けず嫌い、人の話を聞ける、などの点は共通して持っていました。負けるのが嫌だから、熱 心に研究する。少しでもいいコンディションを保つために自己管理もしっかりするし、食事も、栄養のバランスやタイミングもしっかり研究するなど、いくつか の特徴があります。

発育・発達の各段階において、「変えやすい資質」と「変えにくい資質」が変化するため、それぞれの年代ごとに着眼点が異なるのは当然です。

指導者は、タレント発掘と成長に応じたトレーニングを正しく行うことでいい選手を育てて、いいチームづくりが可能になるでしょう。

ファンの夢をかなえるのが代表の使命 (50日前)

憧れの舞台・ワールドカップ開幕まで50日となってきました。
世界規模の祭典、又は人類の祭典とも呼ばれるサッカーの世界選手権。選手は勿論、家族やサポーター、指導者、メディアの方々のテンションやプレッシャーもワールドカップの本番にはオリンピック、アジアカップ、強化試合とは比べものにならないすごいものになると思います。

オリンピックより大きな「メディア能力」、テレビ放送の総視聴者数は、500億人とも800億人だとも言われています。特に決勝戦は、世界の四分の一から 三分の一もの人間(20億人)が同じ瞬間に同じプレーに感嘆の声をあげることになる。このような全世界が注目する大会で、それぞれの国を代表して戦うこと ができることを誇りにし、世界に強い日本代表をアピールしたい。それはファンの夢でもあるし、日本代表チームの使命だと思っています。

「日本代表は、強くなくてはならない。」

今回のワールドカップでは1億2000万人、ほとんどの日本人がサッカーに触れる機会があるでしょう。 すべての国民に、日本を誇りに思ってもらえるような素晴らしいプレー、強い日本代表を作ります。そして、サポーターの夢をかなえてあげたい。 それは強い日本代表チームを作ることだと考えています。

子供の未来に、大きな夢をプレゼントしたい・・・・。

2002年・6月の記憶と共に。

規律と自由-50%のコンセプトの上にある自由

サッカーはチームプレーである以上、コンセプトディシプリンという、戦略・戦術のベースとなる考え方が必要になります。しかしチームの戦術だけをこなす選 手は、個性や意外性、創造性、かけひき、勢いなどにおいて相手の能力が上になった局面での打開策なども乏しく、チーム全体が行詰ってしまうでしょう。
チーム内に監督の指示することだけを100%やっていれば、ミスも少なく、怒られることもないから、与えられた槻律や戦術だけを意識してそれが全てと考えてプレーするような状態がおこると、チームの成長は、全く期待できなくなってしまいます。

「100%のチームの戦術は、個人の中では50%にすぎない」

私はチームのコンセプトを理解した上でチームでの役割を100%やりとげながら、個人のいいところ・個性をどう生かしていくかが大切であると考えています。

チームコンセプトは個人の中では50%にすぎず、残りの50%にどう自分のプラス部分を上乗せしてプレーできるかが重要であると思います。指導者は「これ だけをやれ」という考え方ではなく、その上に自分の個性を出してアピールしてほしい、というプラス思考的なアプローチが大切です。その結果として、チーム 全体が、統一した方向性を持ちながら、個々の能力を生かした魅力あるチームができるのではないでしょうか・・・。

チームのコンセプトや戦術はそのまま同じでも選手を変える事で、それぞれの個性・特性を生かせば、守備的、攻撃的など、様々な変化に富んだチーム作りは可能になります。

現在の代表チームは、このバランスがよくなってきたと感じています。ワールドカップに向けて、さらなる調和を図り、バランスのいいチームになるよう努力していきます。