Category Archives: スポーツ報知評論

8月5日 東アジア杯 日本 1―1 韓国

 日本は前半は後ろでブロックをつくり、後半は前へ積極的にボールを奪いにいっ
た。守備のスタイルとしてどちらがいいか悪いかの答えはない。PKで失点こそしたが、どちらのスタイルでも対応して、しっかりゴールを守れていた。そこはポジティブに捉えていい。
 問題は最後の15分。初戦で勝った韓国と、敗れた日本ではこの試合の位置づけは異なる。韓国は引き分けでも優勝に前進するが、連覇を狙う日本はこの試合は勝ち点
3を手に入れなければ意味のない試合だ。例えばMF藤田が持ち味のロングスローを
やってもいい、それを合わせにDF森重がゴール前に上がってもいい。太田や遠藤の
両サイドバックがリスクを冒して高い位置を取りにいってもいい。ハリル監督も疲れの見える選手をもっと早い時間帯に交代させて、巻き返すということもできたはず。そうした各々の特徴を見せて、バランスを崩してでも勝ちにいくという共通意識が見
られなかった。足がつる選手もいなかった。もっとやれる選手がそろっているからこそ、そこはネガティブな部分だ。
 東アジア杯後はW杯予選が再び始まる。海外組も入り、このメンバーは極端な言い
方をすると次の東アジア杯までチャンスはないかもしれない。だからこそ、中国戦で
は失敗を恐れずにチャレンジすることが必要だ。

8月2日 東アジア杯 北朝鮮 2―1 日本

 日本はラスト15分で北朝鮮の「高さ」にやられた。2メートル近い相手20番、
FWパク・ヒョンイルに対応できなかった。「高さ」に対応できなかった事実は素直
に認めるべきだ。日本にセンターバックの高さが足りないのはこれまでもそう。だが急に大きなセンターバックが出てくるわけではない。個の高さでは勝てないが戦術で
対応しなければならない。
 セットプレーは仕方がないが、流れの中ならバックパスをした瞬間ラインを上げる
という方法もある。そうすれば、相手はオフサイドにならないよう後ろ向きに走る必要が出てくる。前向きなパワーを与えると元々のサイズがないだけに分が悪い。ま
た、前からプレスをかけて長いボールを蹴らせないというやり方もある。ペナル
ティーエリア内でヘディングされれば、シュートになる。そこをどうにかして防がな
ければならない。
 残り2戦で戦う韓国と中国も終盤に同じことをしてくる。今後のW杯予選でも日本
と戦うチームは「高さ」をついてくる。日本に足りない「高さ」をどういった戦術で
乗り越えていくか。ハリルホジッチ監督の手腕が問われる残り2戦になる。

7月29日 J1第2S第5節 浦和 1―1 甲府

 興梠は縦パスの受け方も良く、攻撃の形を作っていた。武藤もペナルティーエリア内で相手DFの背後を取れる選手で、素晴らしい才能を見せてくれた。対戦相手に研究されている中、決定機を作ったのはさすが。西川は最後の1プレーで甲府FW阿部拓のシュートを防ぎ、悲惨な結末を阻止した。浦和は攻守の切り替えの質もよく、全体的に決して悪くなかった。
 勝ち切ることができないのは、ペナルティーエリア内での精度を少し欠いており、フィニッシュの場面でズレが生じているから。サイドを崩しているクロスを1タッチで決めることも必要になる。ゴールに直結するスピード感が増せば、チャレンジする気持ちも増える。ただ、浦和に修正すべき大きな問題はなく、1つ勝てば、結果は出始める。

7月25日 J1第2S第4節 名古屋 2―1 浦和

 名古屋FW川又のゴールは浦和DF槙野のマークを外す動きがうまかった。ゴール
前で点を取るところでのプレーで高さ、強さもあり、そこに入り込むスピード、タイ
ミングも抜群だった。ゴール前のポジション取りもいいが、トップスピードでしかも
1タッチでミートできる力もある。
 日本代表は6月のW杯予選でシンガポールと0―0のドロー。クロスの数は多かっ
たが、マークを中で外したり、競り合いに勝てる選手がいなかった。だから川又がいれば…と、ハリルホジッチ監督も思ったはずだ。
  左利きで、ペナルティーエリアの中で仕事できる。東アジア杯ではフィジカル的に力のあるチームが多いが、屈強な川又にはこじ開ける力がある。結果を出せば、海外組を含めたとしても、今後注目される可能性がある。

7月19日 J1第2S第3節 浦和 1―2 広島

 後半20分の浅野の登場によって、浦和の不敗は崩れた。
 投入直後から広島が誇る若きストライカーは持ち味のスピードで浦和守備陣の手を
焼かせた。スルーパスへの飛び出し、ドリブルのスピードを見せつけた。ピッチに
入って2分後にはトップスピードで相手を振り切り、まず1点。警戒感を強める浦和のDFは置き去りにされないよう、最初から距離をとって対応するようになった。それまでコンパクトだった守備は一気に間延び。相手の調子を狂わせ、主導権を握ると後半39分にも大仕事。決めたのはMF青山だが、浅野の2点と言っていいものだっ
た。
 前半は完全に浦和が自信に満ちあふれ、試合も内容も、精神的にも支配。不敗は続くと思った。だが、広島の20歳の登場がプランを狂わせてしまった。

7月11日 J1第2S第1節 松本 1―2 浦和

 浦和の武藤は決して華麗なテクニックでゴールを決めているわけではない。ゴール
前の点が取れるところに入ってきて、ワンタッチで決めている。この日のゴールもそ
うだった。点取り屋とはそういうもの。ひきつけて相手のマークを外す動き、ペナル
ティーエリア内でワンタッチで決めきるうまさがある。
 東アジア杯の予備登録メンバー50人に入っているということは、ハリルホジッチ
監督の目指す縦へのスピード感に合っているということ。東アジア杯は6月のW杯予選、シンガポール戦のようにはならない。韓国、中国、北朝鮮は自陣に引くことはな
く、スペースはできる。トップスピードでゴール前に走り込み、ブレない技術がある。武藤が持ち味を発揮できる可能性は十分にある。
 浦和は第1Sの優勝はアドバンテージだと感じ取っていないだろう。第2S、年間
1位を奪い取るというメンタルをこの試合からも感じた。この日の粘り強さを考えると、やはり第2Sも浦和の強さは健在だと言える。

7月1日 国際親善試合 U-22日本代表2―0 U-22コスタリカ

日本はJリーグで出場している選手を多く呼び、チームとして2次予選から成長した
姿を見せた。野津田の左足、中島のドリブル、浅野や前田のスピード、遠藤のバラン
スなど、個性が見えた。その中でも途中出場の喜田の守備力が光った。
相手ボールを奪う力、カウンターのバランスも取れ、球際で奪ってさらに前への意
識もあった。前線の選手の良いシーンはあったが、それは日本の良いピッチだったか
ら。来年1月に最終予選を行うカタールのピッチは日本ほど良くなく、ボールを持っ
たプレーは計算できない。その点、喜田が見せたような守備力はボールを持たないも
ので、計算できる部分だ。
アジアの枠は3。最終予選では5、6試合目が大事になってくる。選手はポテン
シャルを見せた。あとはそれをどう組み合わせるか。可能性を感じた一戦だった。

6月16日 ロシアW杯アジア2次予選 日本―シンガポール(0―0)

※この日だけ一問一答形式です

―ハリル監督の戦術は選手に浸透していたのか
「攻撃の形はあった。ただ、選手が監督の指示するやり方を“やろうとしすぎ”た。前へ、前へ行こうとして選手同士の距離感が遠くなっていた」
―分析などに誤りがなかったのか
「アジア予選と世界基準の戦いは違う。シンガポール戦はこれまで日本ができていたアジアで勝つ戦い方ができなかった」
―選手起用、交代枠の使い方に問題は
「相手が疲弊する後半30分以降のシュートがほとんどない。準備不足。交代のカードを切っても得点する形にならなかった。勝負が分かれるのは残り15分。ここで得点しないといけない」
―ランク154位以上の強さがあったのか
「W杯予選2試合目でゲームに慣れていた。親善試合とは異なり、相手も球際が激しく気持ちも強かった」
―今後も引いた相手からの得点は難しいのか
「バイタルエリア(ペナルティーエリア直前のスペース)にボールを入れるとセンターバックが前に出てくる。その裏に3人目の選手が飛び込む連動した縦の動きがこの日はなかった。これでは対応が楽になるのも無理はない」
―監督の言う「初戦の罠」とは何だったのか
「親善試合とは違うということだ。就任から3か月で準備する時間が足りなかった。アジア予選と世界で勝つサッカーが違うということを認識するべきだった」
―次戦は力強いプレーを見られる?
「ハリル監督の言っていること(コンセプト)はよく分かる。だが、それだけでは足りない。アジアと世界、両方を見据えた“2本立て”で準備を進めないといけない。ただし、現段階で何かを失ったわけではない」

6月12日 親善試合 日本―イラク(4―0)

3月の2試合で見せた「縦へのスピード」、「球際の激しさ」といった部分は、さらにレベルアップした。
特に「縦へのスピード」はよく出ていた。それは新体制で初出場したDF長友の存在でよく分かる。久々の代表戦だが、試合のリズムには乗れていた。スプリントもできていた。これまでは長友が縦に深いところへ走っているのが目立った。だが、チーム全体として「縦へのスピード」が増した結果、長友の攻守のスプリント力がこの試合では目立たなくなった。それほど縦への意識は高まり、チームとして実践できているということだ。
後半16分にはGK川島から一気のカウンター。香川がドリブルして、本田、宇佐美、岡崎がゴールに向かった。結局、ミスでゴールにはならなかった。疲労が見えてくる時間帯だが、あそこでとどめを刺し切れないところは、ハリルホジッチ監督がまだこのチームに足りないと思っているところだろう。
後半途中から出場して1得点の原口は先発したメンバーに比べるとまだ力が落ちる。だが、ドリブルでの突破力、シュート力という良さは出した。スタメンとしては足りないが、今後、W杯予選を見据えてジョーカーとして起用できる可能性を見せた。
16日からW杯予選が始まるが、結果は心配していない。この予選はハリルホジッチ監督の要求していることをどれだけ一人ひとりが消化して成長できるかをピッチの上で見せる戦いだ。

6月7日 J1 浦和―清水(1―0)

浦和にとって楽ではない試合だったが、勝ち点3を取り切った。6戦ぶりの完封勝利も、ここのところ失点が続いていただけに評価できる。
いつものサイドからのクロスの多さは今季の持ち味。MF武藤、関根、宇賀神と随所で形は作れていた。後は決め切るゴール前のところだ。今季はズラタンのゴール前のアクションが質が高いので、そこで決めることはもちろん、他の選手に点を取らせることができている。この日は、ズラタンが欠場。サイドからのクロスをきちんと決め切れていれば、さらに2、3点入ってもおかしくない展開だった。
守備では危ない場面もあったが、持ち前のシュートブロックと枠に飛ばさせない球際の堅さが目立った。今季通して安定感がある。
あと2試合で勝ち点1を取ればいいというのは、ほぼゴールが見えた状態。相手のことを気にしなくてもよく、プレッシャーのない状況まで来たと思う。第1ステージVに大きく前進する価値ある勝ち点3だ。