スポーツ報知評論

5月16日 J1 名古屋―鳥栖(0―1)

鳥栖の豊田は空中戦では名古屋の闘莉王に完全に封じ込められた。だが、最後の最後の時間帯にゴールを決められる部分で体だけでなく、心のスタミナというものも見せつけた。守備面での貢献も高いが、後半30分すぎに存在感が一気に増す。そこが豊田ならではの強みだ。(スポーツ報知評論家)

5月10日 J1 F東京―鹿島(0―1)

F東京の武藤の調子は悪くなかった。ボールを持った時のキレがあり、緩急、スピードを生かしたドリブルを見せつけた。ボールを持って仕掛けるという姿勢を見せ続けた。ただ、最後のパスが点につながらなかった。
これは個人の問題ではない。チームとして連動してさらに厚みのある攻めを見せることが若いストライカーを生かすことにもつながる。いくら強豪の鹿島といえども、武藤を2人がかりで止めにいっていた。研究されてしまうと、苦しい。味方との連携で相手守備陣をリアクションさせて崩したりするバリエーションがチームとして欲しい。
鹿島はACLの1次リーグ敗退を受けて、引き締まった感じがあった。終盤に植田を投入し、これまで苦手だったセットプレーの守備を克服した。日本代表に選出された昌子も含めて、情熱は伝わってきた。今季の公式戦で初の無失点は自信につながるはずだ。(スポーツ報知評論家)

5月6日 J1 川崎―広島(0―1)

広島の3バックにダブルボランチを加えた5人はさすがだった。
塩谷、水本、青山、千葉の4人はバックアップも含めた前回の日本代表に名前が挙がったメンバー。そこに森崎和を含めた守備陣は安定感があった。川崎相手に自陣ゴール前でのシュートブロックが多く、フリーで決定的なシーンを作らせなかった。 早々と先制し、そこから相手にボールを支配する時間帯が増えた。守備陣はまったくあわてるそぶりを見せず、むしろ余裕で対応していた。川崎のMF中村、FW大久保にボールが集まっても、厳しいチェックで封じ込めた。普通は川崎の攻撃陣相手にペナルティーエリア内で持たれるとあわてるもの。だが、バランスの良い守備が目立ち、チャンスになりそうな1つ手前のところで防いだ。
さすがに日本代表候補メンバー。広島の試合巧者ぶりが目立った。(スポーツ報知評論家)

5月5日 ACL 鹿島―FCソウル(2―3)

鹿島は今季、セットプレーの失点が多すぎる。内容的には主導権を握って、先制点を奪った。いい入り方ができ、リズムをつかんだが、簡単にセットプレーから2失点。この試合が今季の公式戦試合目だが、完封が一度もない。この試合でもスキを見せてしまった。
昨季若手が伸びてきて、成長したと言われたチーム。成長はしたが、まだ本当の実力はついていないということだ。DF昌子、MF梅鉢、土居ら若くて才能ある選手たちはいる。だが、球際の競り合いで負けていた。昌子はマークを一瞬、外して失点した。
可能性があるから世代交代の流れの中でチャンスを与えられている。そのチャンスにあぐらをかいて満足してしまったのでは。若い選手のちょっとした足りないところが結果に表れた。十分に勝てる相手だった。若い選手に昨季のような情熱や意欲、勢いがなかったことが残念だ。(スポーツ報知評論家)

4月26日 J1 G大阪―新潟(2―1)

宇佐美は変わった。技術的にではなく、意識、気持ちといったメンタル面だ。得点シーンに象徴されているが、どんな時でも点を取るために何が出来るかを考え、研ぎ澄まされたものを感じた。
これまではボールを持ったときにいいプレーをすればいい、というように見えた。だが、技術的には急にうまくなるわけじゃない。日本代表にいった後からいいプレーで満足することよりも結果まで意識するというところが変わった。5戦連発は成長し続けないとできないこと。1ステージ上がったという感じがする。
今後の課題はさらにスタミナをつけて、残り分のゴールを増やしていくこと。W杯は3年後に迫っている。そこでは120分での結果を求められることもある。もっともっと成長して欲しい。(スポーツ報知評論家)

4月14日 ロシアW杯アジア2次予選の組みあわせ

最大のライバルとなる第2ポットで、FIFAランクが2ケタのサウジアラビア、オマーン、カタールの3チームと同組にならなかった。一番の対抗馬となるシ リア、二番手のアフガニスタンは政情不安でホーム開催ができない可能性が高く、なおかつ代表チームの強化ができていない国。今年のアジア杯本大会(オース トラリア)に出場したチームの内訳を見ても、A組とH組は3チーム。1チームしか出ていないのは日本のE組とイラクのF組のみだ。そうしたことからも力の 差は明らか。かなり恵まれた組だ。間違いなくノルマは全勝だ。
実力を発揮できればE組ではトップになれる。問題は環境面との戦い。シリアはアジア杯予選のホームゲームをイランのテヘランで開催している。中立地開催をどこでやるかを日本協会が早くつかんで、早く調整することが大事。協会を含めた準備力が問われる。
厳しい環境の中で、チームのコンセプトを植え付けて、最終予選に向けてチームを成熟させていく必要がある。2次予選での負担はない。ハリルホジッチ監督にとって、チームの育成に力を入れる時間ができたと言える。(スポーツ報知評論家)

4月16日 J1・柏―鹿島(1―3) 

鹿島の柴崎は味方を追い越していく動きなど、ここぞというところで前に出ていくスピード感があった。植田のゴールもFKで素晴らしいキックの精度を見せ、 アシストで結果も残した。代表で求められている縦への意識というものがプレーに出た。日本代表で求められていることをやろうとしている意識を感じた(ス ポーツ報知評論家)

4月18日 J1・F東京―広島(1―2) 

F東京のFW武藤の開始早々の一発はラッキーな1点だった。だが、こういう時に調子の良い選手にボールがこぼれてくるもの。余裕があるから、とっさのひらめきでGKの股が空いているのを見て、そこを通した。研ぎ澄まされたものを感じた。
だが、後半は孤立する場面が目立った。味方の選手との距離感が遠く、数的不利な状況を相手に作られた。ボールコントロールの特長なども相手にだんだんと読 まれた。ボールを持った時に周りのサポートがなく、連動できず苦しんだ。体のキレはあり、スピード感はあった。ボールが入れば自信を持ってプレーできる強 みもある。うまくマークを外した場面もあったが、広島のうまい守備もあって、効果的にボールが入ってこなかった。
目立ったのが広島のU―22代表FW浅野。得点シーンは2対3のような状況で、まず自分から仕掛けた。日本代表のDF森重らを相手にまず、自分が仕掛ける という意識があった。パワフルなキレと、パンチ力もある。粗削りに見えるが、今後の成長が期待できる選手だ。(スポーツ報知評論家)

4月22日 ACL 柏―全北現代(3―2)

柏は1位突破を決める大事な一戦で勝ちきったのは大きい。FWクリスティアーノのドリブルのキレが相手を苦しめた。早めに3―0までもっていけたことが勝因だ。
2得点挙げたFW武富も良かったが、やはりMF茨田は素晴らしかった。中盤でバランスを取る能力はもちろん、パスの配り方などにセンスを感じる。チームの 中心になりつつある。1試合を残して1位突破を決めたことで、最後の一戦を負傷から復帰を目指すDF近藤や、FW大津の起用などを含めて調整に使えるのは 大きい。
柏はプレーオフからの出場で、日本で最もはやく公式戦を迎えたチーム。仕上がりが早く、スタートダッシュをかけることができたのが、この結果につながっ た。2年前には4強入りしたが、その時と比べてチームも若返り、新陳代謝もうまく言っている。今後も期待できる。(スポーツ報知評論家)

3月31日 リオ五輪アジア最終予選 日本1―0マレーシア

このままではリオ五輪にはいけない。このチームには悪い習慣が身についている。個人の能力の問題ではなく、心の問題だ。もっとパススピードも上げることができるし、ドリブルで仕掛けることもできるし、ボールを持っていない選手のマークを外す動きもそう。それが出来るのに、ピッチで出せていないところにこのチームの問題がある。
相手が引いてくれるからなんとなくボールを回している。鈴木と久保が前線にいるのなら、もっとシンプルに高さ、スピードを生かすサッカーをやればいい。ボールポゼッションでは圧倒する。だが、U―16、19もアジアでこうやって負けてきた。
ピッチは悪い、暑い。だが、最終予選の行われる中東のカタールはもっと暑い。このままではリオにはいけない。もっと危機感を持つべきだ。(スポーツ報知評論家)

3月27日 国際親善試合 日本2―0チュニジア

スタメンにはフレッシュな顔ぶれがそろった。これまで主力の本田、香川らは形ができあがっていて、ハリルホジッチ監督が自分の形を出しにくい。フレッシュで、「真っ白」な選手は純粋で、新監督の考え方を実践しようとする。もちろん競争というのもあるが、この日のスタメンにはそうした意図があったのだろう。
これまで主力の選手がベンチに座ってどういう振る舞いを見せるかというのも観察している。2018年のロシアW杯を見据えた時に、W杯の舞台で勝つにはベンチも含めたtW人の一体感が必要。アルジェリア代表を昨年のブラジルW杯で決勝トーナメントに導いた指揮官は、さまざまな世界基準をやはり知っている。
交代は2人のセットで計3回。3枚の交代カードを切るのと同じ時間で6人をピッチに送り出した。これは交代の度に試合が止まり、選手の集中力がなくなるのを防ぐためだ。試合のクオリティーを落とさない交代術だ。
戦術のベースとなっているのは「球際の厳しさ」。選手の選考基準にはこれがある。合宿ではブラジルW杯、アジア杯の失点シーンを見せたようだが、これまではシュートブロックできず、相手のシュートコースを広げさせてしまっていた。だが、球際の厳しさを徹底。1人がそこを緩めると、どんどんずれていくもの。それがないというところに、ハリル流の「規律」が表れていた。
「縦へのスピード感」もキーワード。全体的に1タッチ、2タッチが多く、ボールを止めてスローダウンするのが減った。ボランチの山口、長谷部は縦への意識が強くみられた。チャンスがあったら前という選択肢を考え、1タッチ、2タッチでプレーするために思考、ボールを処理、パスという3つのスピードが上がった。
アギーレ前監督の時は選手が「楽しい」という言葉を発し、個人的に違和感を感じた。だが、ハリルホジッチ監督のサッカーは「楽しさ」よりも「充実感」。プロの選手にとって、サッカーは仕事。「楽しい」ことよりも、「充実感」、「達成感」が大事。そうしたチーム作りに向かう指揮官には期待が持てる。(スポーツ報知評論家)?