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勝利は敗北の後にやってくる(スペイン戦)

スペイン戦は残念な結果ではありますが、このような経験が大きな財産になります。この経験、相手との距離感を、次に生かすことが大切。例えば、フェイン ト、スピード、動きのタイミング、キックの質、フィジカルコンタクトの強さなど、実際に肌で感じたことが重要な経験で、それを次の対戦につなげるための学 習能力・頭脳は、日本人は非常に高いので、国際試合を数多く経験することでレベルアップしていくことは間違いありません。

“失敗を肥やしにやる気をおこす者が勝者となり、失敗によりあきらめた者が敗者となる”

失敗を次に生かすことができれば、その失敗は非常に価値のある失敗です。

世界に挑戦する過程で成長が必要です。これを繰り返すことで、いずれ世界のトップレベルに肩を並べるときが来る。そう信じて努力していきたい。そのときこそが、日本サッカーの勝利の時です。

フランスでの時差とコンディション

3月末のフランス遠征では、悪天候がトレーニングと時差馴化に影響を与えました。

フランス時間の20:45は、日本時間の翌日早朝04:45。内蔵も細胞も機能を停止している時間なので、コンディション作りは大きなポイントになりま す。体を動かしていても、エネルギーの供給や神経細胞がスムーズに動かないと、トップパフォーマンスは望めないからです。通常であれば、太陽光を浴びて昼 と夜の差を感じさせることで馴化を進められるわけですが、今回は晴れた日がなく、時間がかかってしまったと思います。

ヨーロッパの選手が日本に来て19:00 kickoff で試合をする場合、その時間は現地時間の昼11:00、12:00に相当しますが、時差により 生活上の問題はあるものの、体の機能は活動している時間であり、試合で体を動かす “時間のコンディション” 的には日本からの遠征よりも有利な点はあり ます。

どんな環境でも闘える選手を育てることが、指導者の大切な仕事であると思いますので、これからも前を向いてがんばります。

バーミンガムでの出来事

2月27日にパリのサンドンスタジアムでのフランスVSドイツ、翌28日バーミンガムへ移動し、イングランドVSスペインの試合を視察しました。

そのバーミンガムのホテルでの出来事です。 ビラパークスタジアムへ行こうとホテルのフロントでタクシーをお願いし、5分で来るということだったので、部屋番号を告げて待っていると、スタジアムまで行くらしい様子の老夫婦もタクシーを待っていました。 私も1人より3人でと思い、相乗りでスタジアムに向かうことにし、立ち話をしながらタクシーを待っていました。しかし、肝心のタクシーがなかなか来ません。外へ出てタクシーを見に行くと、どうやらホテルにやってくるタクシーを若いサポーターがドライバーの確認する部屋番号を「そうだ、私だ」という感じで、次々と乗っていってしまっているではないですか。多分、何台も乗っていかれたのでしょう。

私も「やられた」と思っていると、老夫婦のご主人が次に来たタクシーに乗ろうとしていた2人にお願いして乗せてもらい、5人でスタジアムへ向かいました。
そのタクシーの中では、若い男性の2人と共にイングランドチームの状況や、個々の評価など私たちにとっては有意義な話で盛り上がり、その後もスタジアムまで道案内をしてもらったり(渋滞のためタクシーを降りて20分ほど歩きました)、ゲートまで教えてもらったりと、サッカーを愛する人々の親切に感謝の連続でした。

又、帰りにはスペインのサポーターとタクシースタンドで一緒になり、市街へ戻ると言うのでこれまた一緒に帰ることにして、3人のスペイン人に0-3で負けた言い訳をたっぷり聞かされることになりましたが、陽気なスペイン人の楽しい会話と厳しい選手の評価に驚きました。 特にバルサの選手には厳しく、彼らがダメだから負けたというような話で(彼らはマドリード出身)、スペイン代表チームの難しさの一端を見せつけられた思いでした。

実際に試合を見に行くとやはり現場でしかわからないボールがないところの動きや駆け引き等が良く観察でき、非常に参考になります。

それにしてもフランスのサンドンの75000人もの観客も良い雰囲気でしたが、イングランドのサポーターはさすがに”熱い”という感じがしました。

ホームページ開設にあたって

サポーターの皆さん、応援ありがとうございます。

皆さんの熱い声にいつも勇気づけられています。現在、ワールドカップに向けて最善の準備をしているところです。

この度、多くの方々の協力を得て、私の公式ホームページを開くことになりました。このホームページを通じて、サポーターの皆さんの熱い声援と勇気を感じ、それらを自分のパワーにていければと考えています。

日本のサッカーのレベルは現在、世界のファーストランクに近づきつつある事は間違いありません。これはJリーグの発足による選手のプロ意識や彼らを取り巻く環境の変化、ユース年代の強化の成功による世界大会出場の経験などによるものです。 又、トレセン制度の充実により、世界レベルと子供を結ぶパイプがしっかりと確立されたことも大きな要因であると思います。

そして、多くの優秀な選手が育ってきた背景には、数多くの指導者の努力があった事は言うまでもありません。日本代表メンバーはこれら日本サッカー界全体の成長の結果だと考えています。今年はフランス、スペイン、ドイツなど強豪とのゲームが予定されていますが、そこで得るであろう大切な経験をチームのレベルアップにつなげていくことが大切だと思います。今年はアジア予選がないため、チームがひとつにまとまるのが難しい1年だとは思いますが、一歩一歩勝利への階段を上がっていきたいと思います。

私は指導者として多くの選手を見てきました。

素晴らしい選手はどんな小さな事に対しても、出来うる限りの努力も惜しみません。

「あなたの周りにあなたより3倍成功した人がいたとします。しかし、その人はあなたより3倍能力があるわけでもないし、3倍運が良かったわけでもありません。それは、日々自分の力を信じて、1cmや0.1秒、前に進むことに努力してきた結果だと思います。」

私もこのような気持ちを忘れないように常に努力し、前進していきたいと思います。

この私のホームページを通じて皆さんに夢や感動、勇気をプレゼントできたら幸いです。又、今後とも皆さんの熱い応援をお願い申し上げます。

2001年1月
日本代表コーチ 山本昌邦