対談[2] 「プーマ」取締役:矢島さん

【§2. 高校サッカー選手権大会を語る】

◎高校サッカー選手権は、日本サッカー界の財産

山本:この4,000校のパワーに目を向けていただいているというのは、すばらしい視点だと思います。是非これを我々も応援して、更にスケールアップして、もう一度、高校選手権は世界に誇れる大会だということをみんなに知ってもらいたいんですよね。高校世代で何万人にも観客が来て、ユース世代が必死になってやっている姿って言うのは、世界のどこを見渡してもないんです。

矢島:それはまさにそうなんです。当社のフランス人の社長をはじめとする海外から来る人もなんですけど、高校生の決勝戦で4〜5万人がいっぱいになるというのを見ただけで感激して、この大会は絶対ずっと協賛していくんだと、我々以上に思っているらしいんです。

山本:それは海外にいるからこそ、この組織力とか、大会の大きさとかびっくりすると思うんですよね。この世代で、この大会をマネジメントできるというのは間違いなく世界トップです。これは日本の財産だと思うんですよ。その財産を減らしていく方向ではなくて、これを更に大きくして、世界のトップに立つと。ヨーロッパや南米のまねは出来ますけど、まねをしていても、トップには立てない。クラブはクラブで強くなっていけば良いんすけど、この大会をすごく強化することで、世界がまねできない優秀なタレントを輩出する形が作れるんじゃないかと思っているんですよね。これをプーマでやっていただいているんで、僕はプーマを最大限応援していきたいと思っています。できれば、こういうのを大学でもやれたら良いと思うんですよね。学校体育の強みというのが日本にはあるんです。大学もそういう風になっていくと、年は22歳とちょっといってしまうんですけど、バックアップできる体制があって、おもしろい形かな、と。

矢島:日本の中での、組織力と、組織運営力と言うんですかね。これだけの大きな大会をやるというのは、他の国では考えられないですね。

山本:高校選手権もある程度進化してきて、昔は連戦でやってパフォーマンスが落ちてくるというのがありましたけど、二日やったら一日休みを入れるかと、休みをうまく入れることで回復も出来ますし、サッカーの質を落とさないでやれるようになっています。ただ、ワールドカップの決勝戦も7試合目ですけど、日程がきつくなってくるじゃないですか。

矢島:そうですね。

山本:最後7試合目はヘトヘトですよ。クタクタですよ。でも、延長になってもあきらめない選手しか活躍しないじゃないですか。だから、高校選手権で活躍する選手たちが、そうしたハードルを越えてきているから、クラブの選手より強いんですよ。それを単に、1試合のパフォーマンスだけを見て、プレーしやすい環境の中でこいつうまいねって。うまいくらいじゃ、無理です。強くないと、人間的に。それには、やはりある意味、ワールドカップと高校選手権はスタイルが似ていると思うんです。そこの延長戦で活躍した人が、日本代表やワールドカップに近づくのは必然と言えるのではないでしょうか?

◎4,200校へのサポートプログラムを模索

矢島:もう一つ、どうしても選手権の本戦というか、12月30日から目が行きそうなんですが、4,200校に対して、これが高校選手権大会県予選な訳ですけど、この辺のところにも何かサポートできないか、というのが大きな課題です。

山本:これから更に。

矢島:4,200校に対して何かが出来ないか。あるいは県大会のベスト8、ベスト4なり決勝戦なりに対して、今、残念ながらがあまり出来ていない状況でして。決勝戦でテレビコマーシャルが流れて、試合球を使ってもらうということになっています。

山本:県単位でもう少し浸透させていきたいということですね。

矢島:プーマとして、県協会や高体連にもご相談して、何かお手伝いできないかと言うことを模索しています。

山本:素晴らしいことですね。県の戦いで、いくつかの強豪校が最後まで必死になって戦っていく中で、彼らも成長してきています。そのためにも、見守っていくということも重要だと思います。観客を集めていくことなど、我々指導者もそうですし、プーマを履いている選手もそうですし、うまくコラボレーションが出来れば、高校選手権がもっとおもしろくなると思いますよね。

矢島:そうですよね。県大会、都大会とかの決勝戦には、学校の応援の子どももたくさんいますけど、一般のファンの方々もものすごく来るじゃないですか。西が丘を見ても。こうした方たちは、国立に1月の決勝戦を見に行くのと同じ感覚で、東京都の決勝戦を西が丘で2試合見にくる常連さんもたくさんいると思います。そうした方たちがいる限りは、我々としても何か各県の試合でやっていかなければと。

山本:一つはイベントみたいなことですか?

矢島:イベント、あるいは可能であれば何か特別な賞を出すとか。何か考えないといけないな、というのはずっと課題で、8年間考えています。

山本:プーマのグループの指導者の中にも、優秀な人がたくさんいるので、そうした人たちが、地方大会の決勝戦のテレビ中継の時に、世界目線で解説をするとか(笑)。

矢島:そうですね。

山本:こうしたプレーが世界で通用するだとか含めて。僕はプーマと契約させていただいているので、直接高校生、高校選手権に出る学校の子どもたちと、かなり接してきました。今、代表とかに入っている選手を、高校生の頃から知っています。たいして役に立ってないかもしれないですけど、高校生にもっと頑張れるという刺激を与えられるのは良い機会なので。努力できる才能がある人が一流になっていきますし、そのレベルでは上手だとみられているんですけど、そこから更に上を目指して努力することが大事だと思っているので、そうしたことを伝えるようにしています。結構、多くの選手に活躍してもらっているので、うれしいですね。

矢島:山本さんには、毎年、高校サッカー本大会に出場するいくつかのチームに、技術指導ということで、地方にも行っていただいています。直前の指導をしていただいているのは、皆さん本当にありがたいと思っています。今年もまた、お願いしますという思いです。

山本:直接、先生たちとディスカッションが出来ますし、子どもたちにも実際にアプローチができます。そこで、一流になって世界に羽ばたけるチャンスがあるんだぞ、ということを伝えて、意識を高く持ってもらえればと。急に技術的なことがうまくなるわけではないんですけどね。

矢島:精神的なものですからね。

山本:精神的な部分で言うと、目標を高く置けと。みんな苦労して壁を乗り越えて強くなっているんだから、君たちも絶対にチャンスがあるんだと言うことは伝えていきたいですね。

矢島:大事なことですからね。プーマが高校選手権をサポートすることになったのは、ご縁もありましたが、高校生というのは、「国立」という地が、彼らの聖地となっています。クラブチームもあるけれど、高校選手権で活躍したい、国立に行きたいと言うのが、みんなの願いの中心的なことになっています。そういう大会に、ジュニアユース、ユースに対してサポートしているプーマが、協賛するというのは極めて自然なことで、その流れの中で2006年から今の形となっています。

山本:我々からのお願いとしては、育成年代にますます力を入れていただいて、日本の子どもたちの成長に力を貸していただければと思っています。

矢島:はい(笑)。

◎混戦必須の選手権大会

山本:今年の高校選手権の有力校と言いますが、見所などがあれば、教えていただきたいのですが。

矢島:インター杯のベスト4の内の3チームが県予選で敗退してしまっています。

山本:そうなんですか?

矢島:ですから、混戦になるのは間違いないと思います。

山本:戦国時代。本当に力が拮抗していますね。

矢島:という意味で、本当に目が離せません。もちろん、プーマチームが勝ってくれるとありがたいですけどね(笑)例年、高校選手権の出場校の中で、プーマのユニフォームを着てくれているチームが一番多いんですよ。これは、10年以上続いています。

山本:この10年は、常にプーマのユニフォームを着たチームのシェアが一番多いと。

矢島:No.1。その年によって、チーム数は異なりますが、20校くらいの時とか。

山本:半分近くじゃないですか!!

矢島:40数パーセントですが、そういう意味で、有力校を我々がサポートをしていると。たとえば、山形の「山形中央」対「日大山形」なんかも、両チームがプーマのユニフォームを着てくれています。そうした1チーム1チームが頑張って、活躍してくれることを期待しています。

 

【§3. 強豪校をサポートするバックアップシステム】に続く

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