対談[3] 「プーマ」取締役:矢島さん

【§3. 強豪校をサポートするバックアップシステム】

◎プーマカップの意義

山本:僕は少し思うところがあるんですが、プーマがプーマカップをはじめとして、色々な高校生の大会を全国で展開しているじゃないですか。そこに、プーマのユニフォームを着ている高校生が集まってきて、お互いに切磋琢磨している。1チーム1チームで強い相手とやろうと思っても、なかなか先生方はコーディネートのところに、時間とかお金を使えない訳ですよね。それを、プーマがプーマのユニフォームを着ている強豪校を全国からコーディネートすることによって、プーマカップをやる。そこでは選手権やインター杯のように、タイトルがかかっているわけではないので、ある程度リラックスした状況の中で、素晴らしい芝生のグラウンドを用意してもらっている。集まってくる高校が、高いレベルの中でぶつかり合うことができるプーマカップの存在意義というのは、非常に大きいはずです。こういうときには、技術や戦術に強化の軸を持っていけますね。

矢島:なるほど。

山本:だから、プーマを着ているチームが、高校選手権にたくさん出てくるというのは、そうしたバックアップがあるからだと思うんです。そこで集まってきた先生方が、たとえば大津の大会に来たら、みんな夜、集まって食事をしながら、ディスカッションして、練習内容や選手の動向、今のサッカーの流れについて、プーマがコーディネーションされているんですよね。こうしたところが、本当に大きな力で、指導者にとっては、大会に来ることで実際に現場で起きていることがディスカッションできる。選手にとっては、力を感じる環境が整っているのではないでしょうか?

矢島:そうですね。こうしたことは、継続することが一番大事で、核となる先生が、プーマを着用していただいている高校の先生で、参加するのが自然にプーマ着用の有力校が中心になるということです。

山本:色々なところでプーマカップをやっていただいて。必ずプーマ担当の方が行って、各チームをマネジメントしていただいています。表には出て行かないんですけど、裏で全部コントロールしてもらっているというのは、本当にありがたいことだと思いますけどね。そういうことで、選手がレベルアップしてきた結果が、プーマのチームが多いということなんだと思います。高校選手権はトーナメントなので、普段レベルの高いチーム同士なんですけど、決勝まで行かないと当たらない山になっちゃうこともありますよね。そういう強豪校だけを集めてやっているので、普段当たらないような相手と常に日常的に当たれるというのが、プーマカップだと思うんですよね。それは、ある意味選手権のベスト8以上、ベスト16以上という環境を作っていることが大きなことではないでしょうか?

矢島:堺に出来たナショナルトレーニングセンター。ここには、部分的に協賛しているので、優先的に使うことが出来るのですが、去年の春からプーマカップを始めています。ここにはクラブチームも入っているので、クラブチームと戦えると言うことで出たいという先生方も多ですよね。

山本:クラブと高校のチームで、チーム作りで違う面もあるんですが、そうしたチーム同士はなかなか公式戦で当たれないじゃないですか。サッカーのレベルが高いチームを集めてくることができるというのが、プーマのバックアップのすばらしさだと思うのですが。

矢島:これも継続的にやっていかないといけませんね。

◎プーマが目指す新たな方向

矢島:サッカーと、ランニングを今強化しているんですけど、その中でもサッカーは、ルーツであり芯の部分であると思います。

山本:やはりそれは、競技人口が多いということですか?

矢島:そうだと思いますね。

山本:今、マラソンブームとかで、陸上をやる人がすごく増えてきているじゃないですか?皇居の周りを見ても、ランニングをやっている人が多いですし。仕事を終わってから、社会人の人が何でこれだけ走ってるんだって思いますけど。そっちの方も、オリンピックでボルトが勝ったように。

矢島:そうですね。マラソンもブームなので、我々もこれからまだ伸ばしていかないといけない部分です。導入としては、プーマのランニングは女性にすごく人気がある。サッカーは、男性中心ですけど。プーマはライフスタイルブランドとして女性に認知されていて、女性の方たちが走り始めたりとか、スポーツクラブで運動すると。

山本:ウェアとかもですか?

矢島:女性のランナーにはウェアがすごく人気があって、そしてシューズをはいていただいて。同様に男性の方にも訴求する企画を進めています。

山本:プーマは、機能性はもちろんですけど、ファッションセンスが高くて人気があるという話をよく聞くんですが。

矢島:プーマは、「スポーツライフスタイルブランド」という言い方をしているので、スポーツのにおいがするライフスタイルファッションウェア。

山本:それは新しい方向性なんですか?

矢島:今、一番新しい方向性としては、よりスポーツはスポーツの部分としてすごく伸ばしていく。ファッション、ライフスタイルはその部分で伸ばしていくという二軸に分かれているんですよね。今まではスポーツライフスタイルという言葉を使って成功してきたんですけど、そうするとちょっとプーマはライフスタイルよりのブランドになるかな?という印象をもたれるようなこともあったかも分かりません。やっぱり、スポーツはスポーツできっちりとやると。それが、ランニングやサッカー、ゴルフです。それと共に、ファッション・ライフスタイルでは、よりファッション性を求めて、競り返していくという形に分けてきています。来年に向けては。

山本:僕も、小さいとき、40年、50年近く前からサッカーを始めて、ペレが履いていたプーマのキングペレといった憧れのシューズがあったんですけどね。当時から何万円もするような高値の華でした。僕はヤマハ発動機に入ったんで、そのときは杉山監督で、三菱時代からのプーマの流れがありまして、そのDNAを受け継ぎ、ジュビロになってくわけですけど。ヤマハに入ったときからずっとプーマの靴を履いているので、それだけども30年近く経つんですけど。

矢島:大変ありがたいことですけど。三菱、ヤマハさんというのは杉山さんが移られたと言うことで、プーマのウェアを着ていただいているし、選手も履いていただいていて。

山本:それがいまだに、ジュビロでもプーマですからね。

矢島:シューズで言えば、その頃は「キング」とか「ベルトマイスター」とか、輸入物で2万円以上するシューズを履いていたんですが、その後日本向けに「パラメヒコ」というこれも国産で名品と言ってよい靴ですが、

山本:「パラメヒコ」は日本ですか?

矢島:日本で企画しました。日本のプロというか、トップサッカー選手に合う靴をということで、当時スポーツ販促をやっていた人が中心に作ったんですが。

山本:僕は「パラメヒコ」をずっと履かせてもらっていました。

矢島:それが今でも、「パラメヒコ」シリーズというのが、もちろんモデルチェンジとか機能性をアップしながら続いています。

山本:子どもたちにも手に届く存在で、高校のちょっと上の方を目指している人たちからは大人気でしたね。

矢島:その片方の「キング」が進化したのが、こちらにある靴(製品に指を指しながら)で、これこそ「キングペレ」くらいですか、最初の頃は。「クライフ」「キングペレ」が生まれたんですが。最近にサッカースタイルというのは軽量化。もちろん、フィット性、フィッティングというのは大事ですが、軽量化というのが求められています。この「キング」シリーズというのは、そちらの方に重点を置いて開発しています。そして、全く新しい「キング」シリーズが、この高校サッカー選手権を機に、12月1日から発売開始します。

山本:12月1日から発売ですか。

矢島:これは、高校サッカー選手権のテレビコマーシャルにも出てくるし、選手権に出場するたくさんの選手も履くと。

山本:これはインパクトありますね、これは。

矢島:この黄色をね。

山本:「キングペレ」って、元々靴は革なんで黒一色だったんですけど、靴べらのマークとかに黄色が入っていたんですよね。

矢島:そうですね。

山本:この黒/黄色というのは、当時からの伝統なんですよね。

矢島:ペレが履いていたのは、黒/黄色とかってありましたよね。これも名前を残しながら、今の時代をリードするようなすごい機能のスパイクに変わって来てますね。

山本:そのうち「キングカズ」なんていうのが出来るんじゃないですかね?

矢島:フットサルシューズだったりね。

◎サッカーを通して期待する成長

山本:最後になりますが、サッカーをやっている子どもたちに、どのように成長して欲しいと考えていらっしゃいますか?

矢島:サッカーは、数あるチームスポーツの中で、人口としても国としても、もっともグローバルで、FIFAに加盟している国は、オリンピックに加盟している国よりも多ということからも分かります。つまり、サッカーは世界最大のスポーツと言えます。世界各国でやっているということは、そうした国に羽ばたくことができるスポーツの一つであると思っています。高校時代にそのサッカーを、少なくとも3年間専念してやるということは、そこで培ったチームワーク、仲間・相手をリスペクトする精神、向上心という人間の形成を果たすのに重要な役割を果たすもの。

山本:社会性とか、コミュニケーション能力のことですね。チームスポーツですからね。

矢島:それを彼らが、プロに行かないとしても、大学に行って社会人になる人も含めて、社会人としてそれぞれの成長に、この3年間が大きなプラスになっていくと思っています。

山本:この3年間で大きく成長しますよね。

矢島:そう思いますね。その中から世界に飛び出していく人もいると。というところが、他のスポーツと比べても、チャンスが多いというのもサッカーは可能性が非常に高いスポーツではないでしょうか。

山本:ワールドカップが、世界のテレビの中で圧倒的に高い視聴率を占める。だから、放映権料が高い。そこの頂点を目指す過程で、サッカーマンが人間的にも成長していくというのは、まさしく矢島さんがおっしゃる通りですね。それにチームスポーツですからね。周りとのコミュニケーション能力がないと、良いプレーはできない訳で、それは会社で何かやるときにコミュニケーションが必要になりますからね。

矢島:絶対あると思います。

以上

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